【設問3】 法ルールのデザイン
An airport has only one airline flying out of it; the land under the flight path belongs to ten landowners. The airline can either do nothing to reduce noise from planes landing and taking off, or spend a million dollars a year to completely eliminate the noise; for simplicity we assume that those are its only alternatives. The landowners can use their land either for housing or as farmland.
Each landowner’s property is worth $200,000/year as farmland, $400,000/year as housing without airplane noise, $320,000/year as housing with airplane noise.
ある空港を離発着する航空会社は1社だけである。
飛行経路下の土地は10人の地主に所有されている。
その航空会社は離発着時の騒音を減らすために何もしないか、
年間100万ドルを使って騒音を完全になくすか、どちらかを選択できる。
(単純化のために選択肢はその2つしかないとする。)
地主は土地を宅地か農地に利用できる。
地主は皆、農地利用で年間20万ドル、また
宅地利用(航空騒音なし)で年間40万ドル、また
宅地利用(航空騒音あり)で年間32万ドルの収入を得られる。
(問題A) What is the efficient outcome?
効率的な結果は何か。
(解答) Noise and houses.
騒音+宅地。(訳者注:農地利用より宅地利用(騒音あり)のほうが(32-20)*10=120万ドルだけ効率的。
だがこの宅地利用(騒音あり)を宅地利用(騒音なし)にするのは経済的改悪。
なぜならこのとき、航空会社が100万ドルを使って騒音をなくす一方で、
地主たちは(40-32)*10=80万ドルの追加的利益しか得られない。)
(問題B) For each of the following legal rules, what is the outcome if there is no bargaining between the parties:
i. The airline is not liable for noise.
ii. The airline is liable for noise.
iii. Any landowner can enjoin airline noise.
以下の法ルールは、もし当事者間の交渉がないとすれば、それぞれどういう結果をもたらすか。
i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる
(解答)
i. Noise and houses.
騒音+宅地。(訳者注:航空会社に責任がなければ、航空会社は騒音を出す。騒音があるという条件の下で、各地主の最適反応は、20万ドルの農地利用ではなく32万ドルの宅地利用。)
ii. Noise and houses--unless the court overestimates the damage by enough to make it in the airline’s interest to engage in (inefficient) noise reduction. Or unless litigation costs are large enough to produce the same result ($80,000 damages and $40,000 in lawyer’s fees for each case, say).
騒音+宅地。ただし航空会社が(非効率な)騒音対策をしたほうがいいぐらいに
法廷の損害算定が過大だったり、訴訟費用が(たとえば各訴訟について8万ドルの損害賠償と4万ドルの弁護士料など)高かったりする場合は除く。
(訳者注:航空会社に責任があるとき、航空会社は地主に(40-32)*10=80万ドルの損害賠償をするのが適正だと考えられるが、航空会社は騒音対策に100万ドルを使うよりも「騒音+損害賠償」戦略のほうがいい。)
iii. No noise and houses.
騒音なし+宅地。(訳者注:地主は騒音をやめさせられるならば誰でもそうする。そして宅地利用で40万ドルを得る。)
(問題C) For each of the rules, what is the outcome if there is bargaining? Briefly explain. In some cases you may want to discuss alternative possible outcomes.
i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる
上記の3ルールは、もし当事者間の交渉があるとすれば、それぞれどういう結果をもたらすか。
簡潔に説明せよ。あるケースで複数の可能な結果がある場合はそれらを論じてもよい。
(解答)
i. Noise and houses--the landowners, even if they can overcome the public good problem, aren’t willing to offer the airline enough to pay for the noise reduction.
i. 騒音+宅地。仮に公共財問題をクリアできるとしても、(この場合はそもそも)地主たちは騒音をやめてもらうために航空会社にお金を払わないだろう。
(訳者注:騒音なし+宅地=年間40万ドル、
騒音あり+宅地=年間32万ドルでその差は8万ドル。
全地主の損失合計は80万ドル。
80万ドルのために100万ドルを集めることはない。)
ii. Noise and houses. Airline and landowners may reduce litigation costs by a permanent out of court settlement. Except that …
If courts overestimate the costs and/or litigation costs are high, bargaining costs might force the no noise and houses outcome. This is made less likely by the fact that the airline can settle with some landowners and pay damages to the holdouts--as long as the total is less than the cost of preventing the noise.
ii. 騒音+宅地 *1 。また航空会社と地主はいつも法廷外で和解(示談)することで訴訟費用を節約するかもしれない。だが以下のような場合は騒音+宅地にならない。
もし(法廷に行くとして)損害算定が過大になりそうだったり、訴訟費用が高くなったりしそうなら、(事前の)交渉コスト次第では「騒音なし+宅地」を余儀なくされることもあるだろう *2 。
--ただこの可能性は、航空会社が地主の何人かと示談し、それが無理な場合は命じられた賠償金を払うという戦略をとりうるぶんだけ低くなる(もちろんこれはその総費用が騒音をなくすコストより低いときに限るが) *3 。
(訳者注1:このケースはいろんなパターンがある。だがいずれにせよ航空会社は、法廷に行く前に、また100万ドルの騒音対策をする前に、8万〜10万ドルを各地主に払う交渉・示談について考えたほうがいい。)
(訳者注2:もし法廷に行くとして、たとえば賠償金が過大な99万ドルになったり、
適正な80万ドルという算定であっても訴訟費用が19万ドルになったりしそうだとする。
このとき事前の交渉コスト(取引費用の一つ)が1万ドルを超えるなら、交渉もせず法廷にも行かず最初から騒音をなくすほうがいい。このときの結果は騒音なし+宅地。)
(訳者注3:交渉コストが高くつこうとも、部分的に示談にすることで「騒音+宅地」ですむ可能性があるということ。
たとえば賠償金が9.9*10=99万ドルになりそうなとき、
先にうまく5人と8.1万ドルで示談できるなら、支払う金額は合計49.5+40.5=90万ドルになる。
このとき仮に交渉コストが高くついて5万ドルになるとしても、
訴訟費用が5万ドル以下であれば総費用は100万ドル以下になる。結果は騒音+宅地。)
iii. Either noise and houses--if the landowners can overcome the holdout problem and accept compensation for permitting noise--or silence and houses if they can’t.
iii. 地主たちがホールドアウト問題をクリアし、騒音に対する補償を受け入れる場合は「騒音+宅地」。それができない場合は「騒音なし+宅地」。
(訳者注:本来8万ドル〜10万ドルを全地主に払うことで話はまとまるが、
各地主は拒否して80万ドル〜100万ドルの大部分の得ようとするインセンティブがある=ホールドアウト問題。)
(問題D) Suppose transactions costs are very high, giving the same outcomes as in B above. How large is the inefficiency from each rule, relative to the efficient outcome?
i. 航空会社は騒音に責任がない
ii. 航空会社は騒音に責任がある
iii. 地主は誰でも航空会社に騒音をやめさせられる
いま取引費用がとても高く、これらの法ルールは全部問題Bと同じ結果をもたらすとせよ。このとき各ルールがもし非効率な結果をもたらすとしたら、それは効率的な結果と比べてどの程度のものか。
(解答)
i. Zero--the efficient outcome.
i. 差はない。効率的な結果。
ii. Zero--except that there may be litigation costs of unknown size (but not more than $200,000 litigation cost to the airline, since otherwise it will stop making noise).
ii. 差はない。ただし未知の大きさの訴訟費用が存在するような場合は除く。
(ここで未知の大きさといっても航空会社の予想は20万ドル以下のはずである。それを超えるときは騒音を止めるだろうから 。)
(訳者注:損害賠償金=80万ドル。騒音をなくすコスト=100万ドル。
もし訴訟費用が20万ドルを超えるなら総費用が100万ドルを超えるので騒音をなくしたほうがいい。)
iii. The airline pays $1,000,000 to buy noise reduction that produces a benefit of only $800,000, for a net cost of $200,000.
iii. マイナス20万ドル。航空会社は
地主たちの80万ドルの利益のために100万ドルを使って騒音をなくしている。
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